こんな人の話を聞いたことがあります。
彼はビジネスでの成功を夢見てタイへと渡りましたが、詐欺に遭って無一文となってしまいました。
日本から遠く離れた異国の地で、お金も人間関係も全て失ってしまったのです。
食い扶持を稼ぐため、その辺に落ちていたゴミで輪投げの道具を作り、露店を開いてはみたものの、ほとんどお客は来ません。
食べ物といえば、近くの食堂で一番安く美味しくもない、安い肉団子のスープ一皿。
お金が入らず、その辺の草木を食べて飢えをしのぐこともあったそうです。
そんな生活が二年続きました。
身体的にも精神的にもボロボロで、もう駄目だと自殺まで考えていたその時、スーツ姿のビジネスマンから声を掛けられました。
「この辺に大型のリゾートを建てたいので、あなたがいつも輪投げの店を開いているこの土地を売ってほしい」
二年間の彼の赤貧生活からは考えられなかった、凄まじい金額が提示されました。
そのお金で再びチャンスを手にした彼は、今度こそビジネスに成功し、今なお異国の地で活躍していると聞きます。
人間、何があるか分からないものです。
辛すぎて辛すぎて死にたい、と思った次の日に、思わぬ幸運が訪れることも、現実には起こり得るのです。